
深夜2時ごろには御来光を頂上で見ようとするのでしょうか、起きて動き出す人も多くいて、物音も大きく、やっと得られた安らぎもあえなく失われます。仕方ありません。ここは山小屋。そういう場所です。さすがの隊長も寝苦しそうです。
我々は既に頂上に行っていたし、御来光は小屋で見ようと元々話し合っていたので、4時30分頃まで寝ている作戦です。(日の出は4時50分頃と確認していました。)我々と同じく小屋で御来光を見ようという人たちが4時過ぎ頃から動き出し、小屋の朝食の準備も始まりだしたので、私もボチボチ起きようかと身支度をします。といってもシャツを替えたくらいでしたが。(下着を替えられるような、いわゆる更衣室はありませんでした。女性は大変だろなと思いました。)いつもは大抵私より早起きの隊長が珍しくまだ寝ていたので、そうっとゆすって目覚めを促します。隊長は少ししんどそうな様子。”寝られた?” ”うーん・・・” まあこれじゃあさすがに寝られないよな。悪いことしたな。と自らの不明を恥じます。それでもなんとか二人とも起きてダウンを着込んで小屋の外のベンチに陣取ります。待つこと10分ほどでしょうか。鎌倉、横浜、そして海と挟んで房総半島、その向こうから赤々とした太陽が昇ってきます。姿を見せたらあっという間にぐんぐん昇って色も赤からオレンジ、金色へと変わっていきます。きれいだな・・・というシンプルな感想です。
隊長は昨晩はほとんど寝られなかったと言っていました。しんどそうではありますが、目の中には充実感を見て取ることが出来ました。それはともに山頂に致り、御来光を見ることが出来た喜びと、怪我無く下りることへの思いだったのでしょう。
小屋の中に戻り、朝食をいただきます。ハムエッグとお味噌汁です。さいわい食欲も(普段通りではないものの)戻っており、軽いご飯一杯とおかずを余さず食べることが出来ました。そうしたら、やっと小用の気配がしたので、取り合えずトイレに向かいました。無事に用が果たせたのですが、よく考えると大石茶屋の出立時以来のトイレです。ここまで食事を除いても3500ミリの水分を摂っていることを考えればおかしな話です。(ザックの中は空いたペットボトルだらけでした。)

普段の山では下り道を苦手としている隊長も大砂走はおもしろい、楽しいと言っておられました。仮にコケても顔が砂まみれになるくらいでイケるわ!という気分です。一歩一歩が滑って倍に伸びるような感覚です。下りはあっという間。八合館も半蔵坊もみるみる遠ざかります。やがて大砂走から登り用の道と並行する下りの道に入り、いくらも滑らなくなってきたらもう大石茶屋に戻ってきました。八合館をでて4時間かかったかどうかという感じでした。
大石茶屋に戻って、茶屋のお姉さんに無事に戻ってきました!と告げるとお疲れ様!と明るい返事。そして洗面用の冷たい水を下さいました。生き返るような気持ちよさ。顔を洗うだけでは半分残るほどだったので、短髪を生かして頭にジャバーっとかけます。最高。頭を拭き拭きベンチに座って休憩していたら、小屋のご主人の姿が。 ”大将!無事に戻ってきたよ!頂上行けたよ!”と伝えると、
(ん?誰?)みたいな顔をした後、””ああよかったね!””とお返事。
”カルピスおいしかった!ありがとうございました!!”と言えば
(ん?そうだったかな?)みたいな顔の後 ”あ~いやいや”みたいな返事をなさる。あれ?私らわかんない?と思いましたが、
それは茶屋のご主人、これまでもこのルートを使う多くの登山者に我々と同じように応援とアドバイスを授けてこられたのでしょう。ご主人にとっては日常のこと。つまり印象に残らないくらいで良いのです。
普通にやってきて、普通に登って普通に下りて来て、なんでもなく去っていく、それこそが良き登山者。さわやかな気持ちでお世話になった大石茶屋を去ります。(預けていた荷物を受け取って。助かりました。)


翌日、浜名湖でカヤックを楽しんだのち、道の駅で野菜を買い込み、高速で無事に帰宅出来ました。よい思い出が出来ました。
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